受験の記録・論文編・憲法1

(受験の記録・目次)
(ロ-1)憲法1
(A)印象
恐らく論文試験の中で最も受験生が苦労する科目。
原告・被告・私見という3つの立場で論じることを求められるのが最大のポイント。書き分けをしないと書く内容が重複してしまう。この重複については、試験委員が好まないところであるとされていることは既知の通り。この書き分けのコツを掴むために自分も最後の最後まで苦労していた感がある。
今年の試験では多少出題の形式が変わったが、3つの立場で書きわけるというポイントは変わっていない。この書き分けをマスターすることが最大のポイントである。
とはいえ、論文編の総論で述べた様に、これはあくまで「優秀答案」を書くためのポイント。重複した論述をしたところで不合格となるわけではない(合格答案で「原告の主張と同じ」といった旨の論述はままある)。また、場合によっては、個別的なあてはめで原告の主張を引用する場合もある。なので、そこまで神経質になる必要はない。大事なのは「憲法の答案の書き方」を形式・パターンとして身につけること。
これ以外にも、憲法特有のポイントが数多くある。
前出の「水掛け論」、「フルスケール」の内容、法令違憲と「処分の違憲」の区別、三基準説などがこれにあたる。
「水掛け論」をさける書き方は憲法におけるあてはめの骨子といえる重要なポイント。「処分の違憲」(適用違憲と書かないのは羽広を参照)の書き方については、勘違いが多いと思う。三基準説は、その概念自体あまり知られていない。
これまでの過去問の論点だけを見れば、内容面で難しいことは特にない。難しいのはこうした「憲法の答案の書き方」という手段の面のポイント。そして、その手段の面のポイントが問題文上で誘導されていないことにある(羽広参照)。誘導がなされていないこれらのポイントを事前の準備によって押さえることができさえすれば、憲法は大きな武器となるはずだ。

(B)教材
◎芦部憲法、○事例研究、○百選、△憲法演習ゼミナール、×ケースブック
最高の教材は芦部と再現答案集(特に羽広)。
芦部を読んで権利性の導き方を学ぶことがすべての前提。表現の仕方も含めて暗記してしまうべき。
ちなみに、自分は違憲審査基準についてはあまり芦部説を採用していなかった。例えば、平等の論点について、芦部が列挙事由ごとに区別する考え方をするのに対して、私は、「平等原則説」→「相対的平等」→「単なる例示列挙説」→「合理性の基準」の流れで片づける判例の考え方で整理していた。LRAは極力使用しないようにしていた。また、「明白かつ現在の危険の基準」は、判例の事案からして内容中立規制と整理していた(芦部は内容規制とする)。
大事なのは自分の中で決まったパターンを用意しておくことなので、どのような考え方をとるかは別に重要ではないと思う(勿論、論理的に正しい考え方であり、かつ、ある程度認められた考え方であることが前提だが)。

(C)コメント
(a)押さえるべき点(暫定)
・原告の立場を書く際のポイント

・「フルスケール」:問題提起→権利性→権利制約の根拠→二重の危険→違憲審査基準の定立→あてはめ

・問題提起はアピールのポイント
・権利性:条文文言→権利の価値・性格→(拡大)解釈→あてはめ
・権利制約の根拠(公共の福祉、外国人、公務員、行政裁量、立法裁量、未成年等)
・二重の基準
違憲審査基準の定立:内容規制と内容中立規制の区別→あてはめ→基準定立
・三基準説:目的の正当性、目的と手段の関連性、手段の相当性
・「水掛け論」を避ける
・法令違憲と「処分の違憲」の区別
・「言い切り型」の表現方法
・原則型と特別型

・被告の立場を書く際のポイント

・ミニマムスケール、あくまで私見の導入
・権利制約の事実がないことの指摘
・公共の福祉の範囲内であることの指摘:間接的付随的制約、内容規制ではなく内容中立規制、対立利益の考慮

私見を書く際のポイント

・被告の指摘を踏まえた基準定立
・被告の指摘を踏まえたあてはめ
・「水掛け論」を避ける

それぞれのポイントの具体論について、後半で続けて述べる。