再掲・受験の記録・番外5

新司法試験直前。
この時期になると、知識を広げていくよりも、自分のペースで今持っている知識をしっかり固めていくことが大事なのだと思う。
とはいえ、試験直前ということに慌ててしまって自分のペースを崩してしまいがち。
ペースを崩してしまうと固めるべきところが固まらないまま本番を迎えることになってしまうおそれもあるので、いかに自分のペースを守っていくかというメンタル面が(特にこの時期)重要になると思う。
そこで、去年自分がこの時期に心がけていたメンタルに関する記事を再掲。
少しでも参考になれば幸いです。
受験生の皆さま、心から応援しています。

(受験の記録・目次)
番外6.メンタルについて
抽象論ばかりとなってしまうが、ご容赦。
1.普段の勉強において
新司法試験の勉強は2年、3年といった長丁場となる。こうした長丁場の中でモチベーションを持続して勉強していくことはなかなか困難だ。時には合格率の低下を見て無性に不安になったり、周りの大学時代の同級生が就職して成長していく様を眺めて不安になったり、ロースクールの成績で自己嫌悪になったり、将来への漠然とした不安を感じたりするなど、新司法試験受験生にとってメンタル面で勉強の障害となる要素は多く存在するからだ。
こうしたメンタル面の苦労を自分も経験してきたので、多少ともこうした苦労を紛らわすのに役立った考え方・方法を紹介したい。
(1)考えても無駄なことは考えない
合格率、将来への不安などなど・・・こうした自分では左右できない問題、自分の能力を超えた問題については、自分ではどうもしようがないのだから、いくら思考を巡らせても時間と労力の無駄。そんなことをするよりも自分でなんとかできる問題、すなわち、目の前の勉強に集中するべき。
こうした考え方をするようになってから、不安を感じても「ま、仕方ない」と気楽に考えるようになった。
この考え方は普段の勉強にも応用できた。すなわち、考えても理解できないような論点、深すぎる学説の対立などについては意識的に早めに切り上げるようにしていた。もちろん重要論点については簡単にスルーするわけにはいかない場合もあるのだが、自分では理解できないと感じた論点については、とりあえずこの考え方を適用して軽くスルーし、「とりあえず判例の考え方でいこう」とか「通説だけ書けるようにしておこう」と決め、勉強を先に進めるようにしていた。
おそらく学生としてこのような考え方は間違っているのだろうが、時間は有限でその中で押さえるべき点を押さえていかなくてはならないので、仕方ない。
とにかくプライオリティーをしっかりつけながら勉強していくことが重要。そして、こうした勉強法は精神衛生上も非常に健康的だと思う。
(2)直近の目標に集中する
(1)と同じことだが、要は、最もプライオリティーの高いことに集中するということ。
「時期に応じた勉強」を私が推奨するのも、こうした方法が最もモチベーション維持を効率的に行うことができると思うからだ。
その時々の直近の模試を目標にノルマを厳しく設定しておけば、余計なことを考える暇はないはずだ。
(3)意識的にストレス発散
毎日長時間勉強していれば当然ストレスがたまる。こうしたストレスは随時意識的に解消していくのがいいだろう。
ストレス発散方法は各自あるだろうが、自分の場合、自分の趣味に金をかけることがストレス発散方法だった。
すなわち、音楽CDを自分の興味が赴くままに買いあさった。
3年間で100枚くらいのCDが増えた。iTunesのダウンロードも含めたら倍くらいの数時になるかもしれない。
奨学金という資金があったからこんなことができたのだろうが、新しい音楽を聞くと本当に幸せになれるので、ストレスを解消するには自分にとって一番よかった。
このように趣味に没頭する時間を定期的に作ることはストレス解消に一番優れた方法だと私は思う。
2.試験直前において(試験現場も含む)
この時期・この時間帯は誰しもプレッシャーに苦しんでいる。このプレッシャーをまともに受けてしまうと緊張のため現場で十分な力を発揮できない場合がある。緊張のため集中を欠き覚えていたことを思い出せなかったり、視野が狭くなって事案分析を誤ったり問題の読み違いをしたりすることがある。こうした事態を避けるため、できるだけリラックスした精神状態をつくっていく必要がある。
そのためには、こうしたプレッシャーをできるだけ緩和し、かつ、自信を持てるような状態に持っていくように工夫するべきだと思う
以下はその工夫の1つの提案。

(1)たかが司法試験
こういう言い方をすると反感を持つ方もいるかもしれないが、司法試験は資格試験の1つにすぎない。
これを突破しても就職、二回試験、そしてその先にある弁護士同士の競争・・・とハードルはいくつも存在する。とすれば、司法試験もそのハードルの1つにすぎないのであり、たいした物ではない、という考え方をするのはどうだろうか。本当の戦いはもっと先にあるのだ。そんなに気張るほどのものでもない。Take it easyの精神だ。
勿論、本心からそう思っているわけではない。このハードルを越えなければ先はないのだから。
だが、こういう風に試験直前・試験現場では一時的に思いこむのだ。自分はこういう考え方をするようになってから、過度に意気込むことがなくなり(競走馬でいう「かからなくなった」)、大分プレッシャーが消えて気楽になった。

(2)模試での実績
3月の全国模試での結果は自信にそのままつながる。
「自分は○○位だったんだから、多少失敗しても大丈夫。」
「模試でやった通りやれば大丈夫。」
「いつも通りやれば大丈夫。」
こういう考え方を試験現場ですることができれば、もうプレッシャーは感じないだろう。
他方、模試で失敗していると自信喪失となり、本番での緊張につながる。
そのためにも模試では全力で結果を求めるべきだし、模試を目標とした「時期に応じた勉強」をしていくべきなのだ。

(3)プレッシャーがかかるというのは、ブレークスルーの一歩手前
「vivo」のサイト内の特集「ワタシのターニングポイント」第34回の記事棋士羽生善治がプレッシャーをポジティブに捉えた至言をあるインタビューで放っている。
せっかくなのでそのまま引用させて頂く。

「ワタシのターニングポイント 羽生善治」の中での発言。
(以下、引用開始)
「プレッシャーは、その人の器に合わせて掛かるものなんです。
たとえば、高跳びで仮に1メートル50センチのバーを跳べる人がいたとします。
どういう場面でプレッシャーが掛かり、逆に掛からないかといえば、バーが1メートルならプレッシャーは掛からないんですよ。跳べるに決まっていますから。
2メートルでも掛かりません。跳べるわけがないので。
バーが1メートル55センチとか60センチの時に、プレッシャーは掛かってきます。
つまり、どうしたってムリな場合は掛からない。掛かる時は、そこそこいいところまで来ている。あともう一歩でブレークスルーがあるんです。
だから、もしプレッシャーを感じたら、自分はもう8合目まで来ていると思っていればいいんですよ。
まあ、最後の一歩が大変といえば大変なんですが(笑)、8合目まで来て引き返してはいけません。
遅かれ早かれ達成するはずです。時間の問題と思えば、気楽にできます」。
(以上、引用終了)
http://www.e-vivo.jp/0911/turning/index2.html

つまり、プレッシャーを感じるということは、十分勝負できる土台があるという証明。これを乗り越えた先にブレークスルーが待っているのだ。
このように考えれば、プレッシャーを手応え・自信に転化することができるだろう。
素晴らしい名言だ。