HERO


遅ればせながら、映画「HERO」を見た。思ったよりもずっと面白かった。
自分は、木村拓哉の演技にまったく拒否反応や嫌悪感がないので、彼の久利生へのハマり具合が痛快だった。法廷シーンのパフォーマンスも違和感なし。手柄よりも被害者の命の尊さ、遺族の思いの重さを重んじる態度を貫くところに、感動さえ覚えた(結果的には大手柄なわけだが)。

確かに、韓国関係のエピソードはいらない気がしたし、裁判(一審)を最後まで見せてほしかった気もする。
特に、韓国のエピソードは、その前の「ウォーリーを探せ」を制覇してるあの事務官のスローモーションでオチがついてるんだし、結局、車の傷もたいした証明力がなかったこともあって、余計に蛇足に感じた。
でも、この点については、それまで6年間のブランクのせいで疎遠?だった久利生と雨宮を一気に近づけてお互いの存在の重要性を認識させるきっかけにもなっている(ラストシーンにも直結)ので、全く無意味だったとはいえない。両者のラブストーリーがこの物語のキーポイントの一つであること、映画(フジテレビ)の韓国の市場に対する影響、及び、韓国好きのファンを取り込むことによる国内の市場に対する影響を考えると、むしろ意味は大きいのかもしれない。まあ、どっちにしろ中途半端な感は否めないが。

「実際の裁判と違う」「こんな検察官いない」
自分は法律を志す学生なので、前者については気になる点がなかったとはいえない(証人の宣誓がなかったこと、反対尋問がなかったこと等)が、実際の裁判通りに進めたとして映画の質がよくなるとは到底思えないし、そんなことがこの映画の本質ではないわけであって、実際の裁判と違う手続が行われたとしても、そのことがこの映画の価値を下げるはずがない。
また、後者について、法廷であんなパフォーマンスをする検察官はいないと思うが、あれがなければそもそも娯楽映画にならない。というか、観客はあれをこの映画に求めるはず。それに、証人尋問で弁護人と検察官がやりあうのは実際の裁判でもよくあることだし。よって、これもこの映画の価値を下げることにはならないと思う。

自分が気に入ったシーンは、久利生が法廷に出かけるときの警備員とのハイタッチ(予告編の残り18秒前後)。かっこいい。最後にタモリを追い詰めるトリック?も言われるまで気づかなかったので、そこもオオッと思った。古田新太は絶対に出てくると思った。あと、中井貴一松本幸四郎香川照之といった実力派キャストのさすがの演技にも惚れぼれ。こういう舞台でやってる人はやっぱり雰囲気が違う。それこそ「オーラ」(引用元:ダンサー)があった。
反対に気になったのは、タモリのグラサンの違和感。サイズあってんのか?あと松たか子の髪型。ロングの方が似合う。十分かわいいけど。一番気に入らなかったのは、エンディング。もっと気を使ったテーマにしてほしかった。劇中のテーマのなんの工夫もないつぎはぎにウンザリした。(ウンザリしたといえば、映画館で本編が始まるまでの宣伝の量。久しぶりに映画館に行ったからかもしれないけど、とてつもなくイライラした。)

自分はこの作品のドラマのときからのファンなので、相当なひいき目が入ってるが、やはりよくできた作品だった。最初に出てきた被疑者の人たち、スペシャルでの出来事・キャラクターなど、それぞれをストーリーの中でこれ以上なく自然な形で生かすことに成功したのではないか。ただ、不満があるとすれば、空白時間を6年も置いたことに無理があったのでは。せめて半分くらいにしとけば、人間関係、公務員の人事など、いろいろな不自然な点も解消されただろうし、作品の人気もキープできたのではないか。結果論だけれど。続編があるなら、早くみたい!!