受験の記録・択一編・各論

(受験の記録・目次)
(2)各論
・各論では、科目ごとに、本試験の印象、お勧めの教材、勉強法に関するコメントを述べる。
・教材には評価をつけてみたが、これはあくまで私個人のもの。参考までにしていただきたい。
・◎は必須であり何度も反復すべき教材、○は一度は目を通す必要のある教材、△は余裕があれば目を通してみたい教材、×はよほど余裕がある場合でない限りやる必要のない教材。
・沢山教材があげてあるが、総論で述べたように、これらをまともに熟読しているようでは時間がいくらあっても足りない。スピード・量を意識して薄っすらと頭に入れる程度でも構わないので一気に押さえてほしい。
・教材を使用する順番に関しては、肢別本を初めにつぶすべきなのは全科目共通。そこで基礎力を積み上げる。あとは、百選、条文をチェックしながらスタ短の復習をするという流れになるのが一般的だろう。もっともこの辺りはどのような順にやっても一局だと思うので、興味を持った順番につぶしていっても構わないだろう。
(参考:12月のTKC模試前日における私の達成度→http://d.hatena.ne.jp/fjknch/20081224/1230121057
(イ)公法系
・印象
苦手な人が特に多い。憲法は、判例知識、統治に関する条文知識が必要。行政法は、判例知識、条文知識を最も詳しく聞いてくる科目といえるかもしれない。特に準備が必要。
・教材
◎肢別本(双方とも・以下略)、択一六法(◎憲法、行政は不所持)、◎過去問、◎条文、百選(○憲法、◎行政)、◎スタ短の復習、○Wセミナー肢別問題集、基本書(△芦部、○宇賀)、○TKC模試の復習、△重判(双方とも)、○憲法判例集(野中・江橋)、×旧司法試験、×ケースブック
・コメント
特に憲法統治、行政法各法については、条文素読が必須。判例六法を使用して、判例と一緒に頭に入れていくのが効率いい方法だろう。また、スタ短のおまけでついてくる整理表なども切り取って保存しておくべき。
行政法についてはややこしい法律が沢山あるが、とにかく根負けせずに条文のポイントを覚えていくのが実は一番の近道。行政組織法も必要。地方自治法は時間があれば押さえる、という程度で十分だろう。判例についても百選レベルは必須。私は試験直前は行政法百選のうちポストイットを貼ってチェックしておいた判例を読んでいた。あとは、問題演習をとにかくこなしていくこと。
憲法も統治に関しては細かい数字まで覚えておくべき。というか、統治の条文は全部暗記してもお釣りがくる。
憲法人権については、憲法判例集をチェックすることを薦める。代表判例の細かい知識・ポイントも整理することができる。
芦部憲法は、憲法の総論的な部分についてはわかり易く整理されているので読む価値はあるが、あくまで択一対策という観点から見ると他の部分については充実度という点で択一六法の方が勝っていると思う。(後述するが、論文対策としては必須)
旧司法試験の問題は、時間があれば勿論やるにこしたことはないのだが、後回しで構わない。傾向に差があるからだ。そこに時間を費やすよりも、行政法の暗記に時間を費やす方が価値は高いと思う。
ついでに、スタ短の復習の仕方についてコメントしておきたい。私は、試験が終わった後に直ちに辰巳の自習室に向って採点・復習をした。ざっと採点をした後、もう1回全ての問題をときなおした。ときなおす、というのは非常に大変な作業と思われるかもしれないが、さっきまでといていた問題だし採点の直後ということもあり正解していた問題については見た瞬間パスできるものだ。瞬間的にパスできない問題、再び間違えてしまった問題は解説を読んだ後にストック問題として保存しておくこととなる。それ以外の問題は捨ててしまって結構。役に立ちそうなおまけは保存しておくのがいいだろう。だいたい2時間あれば作業は終わる。翌日、ストックした問題を必ず解きなおす。ここで瞬間的にパスできる問題以外は、再びストック問題となる。こうしてストック問題は日々積み重なり増えていく。スタ短はストック問題方式の勉強法の根幹となるものであり、これを復習することは非常に重要なものといえるだろう。決して解きっぱなしにしないように。

(ロ)民事系
・印象
民法総則・物権・債権総論・債権各論・親族・相続、会社法、商法、手形小切手法、民事訴訟法、要件事実、と非常に範囲が多岐にわたるのが特徴的。ただ、問題の難易度自体は毎年(一部を除いて)難しくない。慣れてしまえば130点くらい普通にとれる。得点源とするつもりで勉強するべき。
・教材
◎肢別本、S式択一条文(○民法、◎会社法、◎商法)、条文(◎民法、◎会社法、◎商法、○手形小切手法)、百選(△民法、○会社法、◎商法、◎手形小切手法)、△重判、○Wセミナー肢別問題集、◎スタ短の復習、択一六法(◎民法・他の科目は不所持)、基本書(△ダットサン、△江頭、商法と手形小切手法については不所持、◎民訴しょけん)、◎過去問、○TKC、×ケースブック、△旧司法試験、◎類型別
・コメント
とにかく量があって大変だが、この科目で失敗したら取り返せない。反対に、ここで稼げれば一気にリードできる。勝負所。
親族・相続や商法、手形小切手、民訴の上訴・再審・簡易手続など、省いてしまいたい気持ちは分かるが、絶対に手を抜かないこと。ここは強調しておきたい。まさにここで差が付く。一回押さえてしまえば全く難しくない。
ここには書いてないが、家事審判法なども一回は押さえてほしい。特に、裁判手続との違い(当事者能力・処分権主義・弁論主義の修正など)を押さえる。スタ短の解説のおまけについてくれば必ずチェック。余裕があれば梶村先生の家事審判手続法を読んでみる。
民事系の条文を覚える際は、S式を使うことを強く強く推奨。頭に入り易い。電車の中など、ちょっとした時間に読むのにも適している。
民法会社法の百選を◎にしなかったのは、論文対策で目を通しているはずなので択一対策として特別に読みこむ必要はないとの配慮のため。教材自体としての価値は当然ながら高い。
(ハ)刑事系
・印象
問題の難易度は高くない。特に、刑事訴訟法は、おそらく全科目の中で最も簡単。
もっとも、時間が非常にタイトなのがこの科目の特徴。今年の本試験でも時間が足りずに苦労した。刑事訴訟法で時間的な余裕を作っておきたいところ。
・教材
◎肢別本、◎条文、百選(△刑法、◎刑事訴訟)、◎判例講義�・�(大谷)、○最新重要判例250(前田)、択一六法(◎刑法、刑事訴訟は不所持)、◎過去問、◎スタ短の復習、○Wセミナー肢別問題集、基本書(△前田、○田口、○刑訴しょけん)、○TKC
・コメント
刑法については、構成要件は勿論、判例六法にのっているような判例はすべて覚えておきたい。条文知識についても、執行猶予の条件や減軽の仕組み、減免事由の区別など、多少細かいところまでも押さえる必要がある。他方、学説についてはそこまで熱心に押さえる必要はないと思う。旧司法試験のパズル問題の訓練なんかほとんどやる必要ない。それよりは、短時間で問題を処理できるような瞬発力・スピードを鍛えたい。そのためには、上記の知識を正確に押さえること、及び、問題演習をとにかく繰り返すことが必要となるだろう。問題自体は難しくないが、スピードを要するという点では難易度は高いかもしれない。
他方、刑事訴訟については、上述したように、非常に簡単。基本的な条文・判例を論文で大方押さえてしまっているからだろう。捜査・公判の細かい知識や上訴・再審・簡易手続・裁判員制度など、論文では手の届かない択一プロバーな論点を押さえてしまえば確実に得点源になるはずだ。