受験の記録・択一編・総論

(受験の記録・目次)

2.択一編
(1)総論
・択一は難しい。知らない知識ばかりで戸惑うことがあれば、知っているはずの知識でも間違えてしまって愕然とすることも多々ある。自分の周りでも苦手な人間が沢山いたし、最後まで克服できずに足切りされてしまう人間もいた。
・自分は9月のTKC模試では190点台だった。だが、そこから3か月後の年末のTKC模試では290点を獲得した。(本番では287点。)
・周りを見ていると220点で壁があるように思う。ただ、この点を超えるために必要なことはいたってシンプル。「基本問題」の「反復」である。
・良質な基本問題は司法試験の過去問、予備校の模試の問題といったものが代表的。そこで、過去問と模試の問題をまとめた肢別本を徹底的につぶすのが一番の近道だと考える。(肢別本であればなんでもいいと思うが、私は辰巳が出版している肢別本を使用した。他はほとんど使ったことがない。)そして、それを文字通り繰り返す。知識を持っていることと択一問題をとくことは違う。知識として知っているのに問題がとけない、という経験をするのはそのためだ。問題をとくには反復訓練が必要不可欠。
・そこで、220点をとるために必要なのは、肢別本の答えを全部暗記し、分からない部分があればその都度確認し、できるようになるまでそれをひたすら反復するという作業である。単純な話、これを完璧にするだけで足切りはクリアできるはずだ。
・とはいえ、220点を目標にしていると、いくら択一の配点の占める割合が著しく減ったとはいえ、合格には一定のリスクが生じる。また、試験がある程度近づくと論文に手を入れざるをえないので、その時期までに択一が完成してないと、目指すべき択一の点数もどんどん下がってしまうだろう。また、直前期まで引っ張ると論文対策に直前期の大事な時間を費やすことができないし、精神的にもプレッシャーを感じてしまう。そこで、少なくとも年内は、択一でこれだけとれれば論文で多少失敗しても大丈夫といえる点数を目指すべきである。
・自分は9月の時点で年内280点を目指した。280という数字は、当時(配点変更前)、論文で平均点をとれば合格できる択一の点数とされていた値である。
(イ)9月〜年末(小目標:12月のTKC模試)
・この時期は、とにかくTKCに向けて択一の勉強を徹底的に行う。
・まず、年末のTKCでとる択一の点数を設定する。今年の合格者平均を考えれば250あたりが相場となるだろうか。ただ、できるだけ高い目標を持つことがポイント。高いハードルはTKC模試を受ける際のプレッシャーとなり、緊張感を持って試験に臨むことができるようになる。目標を超えられたら自分にご褒美をあげ、越えられなければサンクションを与えるようなシステムを自分に課せばさらにプレッシャーは高まる。(参考→http://d.hatena.ne.jp/fjknch/20081224/1230121057)仲間内とそれを共有すればさらにプレッシャーを高めることができるだろう。
・択一の勉強のコツは、深い理解よりも浅く広い暗記。質より量。そして、とにかくスピード。
・邪道のようだが、択一に限って言えばこれが正道。択一では、論文を書くときのような地に根をはった法的知識は必要ないと自分は思う。なぜなら、それぞれの肢に対して○×をつけるだけでよく、うっすらとしたうわべの記憶でも問題を見た瞬間に答えにたどりつくということが普通に起こるからである。また、最悪、○×を明快につけることができなくても、△をつけること、そして、複数の△に対して順位をつけることができれば選択肢を選ぶことで十分問題をとくことができるからである。
・浅い暗記といっても、一律にそうするのではなく、必要に応じて濃淡をつけるということが大事。論文にも出される重要論点について深い暗記が必要なのは言うまでもない。イメージとしては、ドーナッツの絵を思い浮かべてほしい。真ん中は論文にも出る可能性のある重要論点、その真ん中から外の側へ行くほど論点としての重要性が薄れ択一プロパーの知識となっていくというイメージ。
・ここのすみ分けに関しては、自分は自然とやっていたと思う。判断がつかなければ、論文・択一の問題・過去問をながめて勘をつけるのがいいのではないか。
・自分が択一の勉強ひいては受験対策を本格的に始めたのは9月下旬くらい。9月に受けたTKCの結果が悲惨なもので、ここで目が覚めたというか、危機感を感じた。そこから約1か月ちょっとの間、肢別本ばかりやっていた。
・通学の電車の中でも肢別本をやっていた(復習目的)。土曜は辰巳のスタ短。日曜にスタ論が入っているだけで、それ以外は論文の勉強はほとんど何もやってなかった。本気でやれば1か月で全部回せるはず。
・肢別を終わらせた後は、百選等の資料を絞ってつぶしていく(各論を参照)。自分は9月のTKCで結果の悪かった下4法を重点的にやっていた。その際のポイントは、とにかくスピード。熟読なんてしていると、いくら時間があっても足りない。たとえば百選をつぶすときも、事案・結論・理由をざっと目に入れて、それで終わり!できるだけ短時間で大量の読み込みを行う。そして、この作業を何回も繰り返す。こんなんで覚えるのかと思われるかもしれないが、個人的には、暗記は結局積み重ね。これで十分だと思っている。暗記の方法については後述したい。
・あと、肢別本を解くときの注意点。肢別本を解いてるときに間違った問題については、ポストイットを貼るなどして、後で戻ってこれるシステムを自分で作るということ(ストック問題→後述)。あとは、間違ったポイントについてまとめたノートを作ること。いったん間違えた肢を再び間違えないことが一番肝要。

(ロ)1月〜4月(中目標:4月の全国模試)
・この時期は、12月のTKCの結果によってやるべきことは変わってくる。
TKCで目標をクリアしたならば、次のステップ、すなわち論文の勉強に進む。全国模試では論文・短答双方の得点にこだわり、A判定を狙う。択一の勉強はスタ短を受ける、電車の中で肢別本を読む、空いた細切れの時間に復習ノートや判例集などを読む、といった程度で択一の勉強は十分だろう。
要は今のレベルを試験までに維持させればそれで十分なのだ。時間に余裕があれば、ドーナッツの真ん中に近い知識について理解を深めるという作業でもすればいいが、そうした知識はすでに復習ノートなどでまとめているはずだし、論文を勉強する上で理解が深まる部分もあるはずなので、あまりこの作業に手間取るべきではないと思う。他には、Wセミナー問題集を解いて更なる問題演習をつむ、というのもありうるが、やはり論文とのバランスを失ってはいけない。択一と論文の配点比を常に意識するべき。
・目標をクリアできなくとも足切りラインをクリアしたならば、択一の勉強を継続しながらバランスよく論文の勉強を始める。バランスよく、というのは難しいかもしれないが、単純に勉強時間を半々にすればいいだろう。択一については、Wセミナー肢別問題集をとくなど、更なる問題演習を積むといいだろう。そうやって、4月の全国模試において当初の目標ライン突破を狙うべき。
足切りされてしまうレベルならば、全国模試でそれを突破するべく、引き続き反復練習を繰り返す。足切りされてしまうと答案を採点すらしてもらえない、ということを強く認識するべき。
(ハ)4月〜5月(大目標:5月の司法試験)
・3月の予備校の全国模試の結果によって、またやるべきことは変わる。内容は(ロ)と被るので繰り返さない。
・ただ、本試験1週間前くらいになれば、択一高得点獲得に自身のある人・足切りライン突破に自信のある人も多少択一の勉強の割合を増やすことをするべきかもしれない。なぜなら、この時期になると論文の形もある程度固まり論文の上積みがそれほど期待できないのに対して、択一は直前に覚えたところが出るなどして、多少の上積みが期待できるからである。この辺りは各人の手ごたえにもよるだろう。
全国模試で択一283点だった私は、1週間前あたりになると一日の半分をストック問題を解く作業にあてるなどして択一対策に力を入れた。(本試験では287点だったので、ほんの数点だけど上積みがあったのかもしれない。)
・なお、ストック問題とは、肢別本・Wセミナー問題集・スタ短といった問題集の中で自分が間違えた問題、間違えそうな問題として後で見直す価値のある問題のことである。このストック問題という整理の仕方は非常に大事である。択一をきたえる際のポイントは、一度間違えた問題を二度と間違えない、というところにあるからである。こうした問題についてはポストイットを貼るなどしてチェックしておき、完璧にとくことができるまで繰り返しとくべきである。大事なのは、できなかったらもう1度ストックし、できたら潔く捨てるというのを徹底することである。私の場合、スタ短だけでストック問題は束になるほどできあがった。それを少しずつ減らしていき、試験前日には1日でストック問題を回せるくらいにした。
(二)まとめ
まとめると、択一の勉強法のポイントは、まず、肢別本の反復練習。次に、濃淡・スピード・量を意識した勉強。そして、時期に応じた目標達成度と相談して随時論文の勉強に移り、両者のバランスをうまくとること。
そして、小目標・中目標を設定した上で時期に応じて必要とされる点を重点的に勉強するという「時期に応じた」勉強が試験対策としては最も効果的であり「適切な」勉強法だと私は考える。
では、「何を」勉強するのか、科目ごとに具体的にみていこう。