受験の記録・総論

(受験の記録・目次)
1.総論
(1)はじめに
・この「受験の記録」は、私が新司法試験受験を通じて考えた合格に必要に勉強法についての考察をテーマとした論稿である。
・「序」でも述べたことだが、この論稿はあくまで「覚書」。究極的には私が想い出として残す程度の書きものにすぎない。普遍性があるものとは当然思ってないし、他人に押し付けるつもりも毛頭ない。もっと言えば、受験指導・受験アドバイスをするつもりすら全くない。私にそんな度量はないし、何より、司法修習生及び若手弁護士の現状を考えれば、私は自分のことで手一杯である。
・ただ、このようなはてなダイアリーの中でも辺鄙なブログをわざわざ訪れてこの記事を見て下さった方にとって、この覚書が各人の役に立てばそれは望外の喜びである。
・そこで、記事を欠く際には見て頂く方を意識した書き方をするつもりである。だが、何せ文章力の無い私なので、読みにくい点があると思うが、そこはご容赦いただきたい。
(2)努力が報われる試験
・この新司法試験を受験していて思ったのは、少なくとも合格するのに才能は全く必要ないということ。もちろん才能があればそれに越したことは無いのだが、絶対条件ではない。絶対条件なのは、目標に向けた適切な努力を継続すること。各人の能力に応じて、その勉強量・勉強時間には差があるだろうが、最後まで走り抜けること。走り抜ける気概を持ち続けること。それさえあればその努力は合格という形で絶対に報われる。
・もっとも、努力とは単に机の前に向かうことではなく、「目標に向けた」「適切な」ものでなくてはならない。押さえるべき点を確実に押さえなければならない。方向を全く誤った検討違いのことに時間を費やしてもそれは努力とはいえない可能性がある。
・どのような勉強をすれば「目標に向けた」「適切な」努力といえるのか。新司法試験における1つの回答をこの連載で提示してみたいと思う。
(3)時期に応じた勉強を
・まず、その回答の骨子の第1ともいうべき点は、「時期に応じて勉強の中身を変える」ということである。
・設定した目標を実現する過程において、遠くの目標ばかり見ていると自分の位置が分からなくなり適切な対策をとることができなくなってしまう。そこで、大目標から逆算して、小目標、中目標を設定することが出発点となる。
・新司法試験の場合、大目標は勿論5月の本試験。小目標は12月のTKC模試、中目標は4月の予備校の全国模試とするのが一般的だろう。
・9月〜年末、1月〜4月、4月〜5月という3つの段階に応じて、それぞれ勉強する内容・勉強法は変えていく必要がある。
・9月〜年末は、択一対策。
・1月〜4月は、論文対策。
・4月〜5月は、双方の復習の時期。
・このように時期に応じて直近の目標に向けて最も必要な勉強を随時行っていく。これがモチベーションを保つという意味でも最も効果的な方法だと自分は思っている。
(4)「試験現場」で「合格答案」を
・次に、回答の骨子の第2は、当たり前のことだが、合格答案を徹底的に研究するということだ。
・出題の趣旨・ヒアリングを熟読する、合格者にアドバイスを貰う、友人と勉強会を組む、予備校に行くといった方法も勿論重要だが、合格答案を読み込むことで合格答案の中からエッセンスを抽出する作業こそが各人のノウハウを磨くことになると私は考える。
・具体的には、まず、合格答案を読み込むことによって、合格するために押さえるべき点は何か、ということを検証することだ。
次に、その押さえるべき点をどのようにして身に付けて答案という形で自分一人で再現する力をつけるのか、ということを徹底的に考えることだ。
・前者についてはもう一般的に答えが出ていると思われる。「あてはめ」の充実である。もっと言うと、事実の評価の充実である。後者については、問題演習を繰り返すほかない。
・事実の評価とひとことでいっても、イメージがわかないと思う。私は、これについてかなり分析的に考えた。分析として成功しているかは分からないが、後々、それについて述べていくつもりだ。
・また、あてはめだけでなく、形式面・実質面で色々な押さえるべき点がある。それについても論文編で述べよう。
・とはいえ、合格答案の研究をするだけでは、現場でそれを書くことはできない。現場においては、事案分析の方法、時間配分といった点が試験を受ける上ではすさまじく大事であるからだ。
・事案分析が間違っていれば論点の抽出もあてはめも何から何まで間違ってしまう。おそらく実力者が落ちるパターンの一つといえるだろう。また、時間が足りなければ書ける実力があっても無意味だ。「現場で」合格答案を作るというのは、本当に困難な作業であることを早くから認識する必要がある。
・このように「現場で合格答案を書く」ことを徹底的にイメージして、それを行うのに必要な努力を事前に行う必要がある、と自分は考える。
(5)まとめ
というわけで、私の考える「目標に向けた」「適切な」努力とは、時期に応じて直近の目標に向けて最も必要な勉強を行うこと、そして、試験現場で合格答案を書くことのできるような訓練をすることをいう。
では、そうした勉強とは具体的にどのようなものなのか、これから述べていくことにしよう。